みなさんこんばんは、埼玉県さいたま市の特定行政書士、田中太志です(当事務所のホームページはこちら)。
令和3年10月1日から、「埼玉県エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」が施行されていることは、県民のみなさんならご存じのことと思います。私も知っています(埼玉県のホームページの解説はこちら)。駅の構内などでよくポスターを見かけたり、アナウンスを耳にしたりしたので。その内容もおおむね知っていました。「急いでいる人のために右側をあけてエスカレーターに乗るのはやめよう」という感じであると。
しかしなぜそれが良くないのかや、どのような条文なのかはよく知りませんでした。そこで数日前、エスカレーター条例にちゃんと向き合ってみようと思い、埼玉県のホームページで同条例の解説を読み、全条文のPDFをダウンロードし、紙に印刷し、4色ボールペンを片手にじっくり読み込みました。その結果、エスカレーター条例について完全に理解したので、みなさんと知識を共有したいと思います。
まず、この条例は全7条しかなくて、極めてシンプルです。数分で読み終わるので、一読してみるのも良いかと思います(条文のPDF[埼玉県ホームページ内]はこちら)。以下に、各条文の要点をわかりやすく書いていきます。
第1条には、エスカレーターは「動く歩道を含む」とあります。私はこのことを初めて知りました。平らな動く歩道であっても、片側をあけて乗ったり、その上を歩いたりしてはならない、というわけです。これは盲点ですし、動く歩道の上は歩きたくなるのが人情なので、守るのは難しそうです。でも守らなければなりません。
第2条には、県のやるべきことが書かれています。事業者などと連携しながら施策を進めていくべし、とありますが、県民にはあまり関係ありません。
第3条は、我々に関係があります。県民は、エスカレーターの安全な利用についての理解を深めていかねばなりません。私のこの記事を読むことで理解が深まりますから、ぜひ最後までお読みください。また、県民は、エスカレーターの左だけに立たず、その上を歩いたりもしない。それを積極的におこなうよう心がけねばなりません。エスカレーターに乗ろうとするとき、我々は「右側をあけて乗らない。歩いたりもしない」と心の中でつぶやき、それを実行する必要がある、というわけです。
第4条は、エスカレーターを設置している事業者なども、安全な利用について理解を深めるべし、とあります。頭で理解するだけでなく、それを実行に移しなさい、とも書かれています。つまり、エスカレーターを設置するほうも、乗るほうも、安全を意識しなきゃダメだよね、ということです。
第5条と第6条が、この条例で最も大事なところです。なにしろ義務規定ですから。第4条までは、努力義務しか出てきませんでした。努力義務の場合は、「そのためにがんばりました!」と言えればよくて、結果は問われません。一方、義務規定の場合は、がんばっただけではダメです。「〇〇をおこなった」という具体的な結果が求められます。
第5条は、エスカレーターに乗る人は、立ち止まった状態で乗らなければならない、と言っています。よく見たら、条文にはそれしか書いてありません。「右側をあけてはならない」とはどこにも書いてない。つまり、条例上の義務は「立ち止まること」のみです。片側をあけて乗らないように努力する必要はあるものの、義務ではない、ということになります。
第6条は、エスカレーターを管理している人(業者など)にも、義務があります。立ち止まって乗るよう、みんなに知らせなくてはなりません。下のような紙を貼るなどして。こういった貼り紙は、みなさんも見たことがありますよね。私もあります。
埼玉県のホームページより引用
最後の条文、第7条では、埼玉県知事(現在は大野元裕氏)は、エスカレーターを管理している人に対して、アドバイスすることができます。「こういう貼り紙をするといいですよ」とか、「ちゃんと貼り紙しないといけませんよ」とか。まあ大野さんが直接やってきて言うことはないだろうと思いますが。とても忙しそうな人だから。
埼玉県のホームページより引用。大宮駅でエスカレーターの安全利用を呼びかける大野知事
以上のように、義務規定は第5条と6条だけです。もし面倒であれば、ここだけ意識しておけば大丈夫です。さらに言うと、この条例に罰則はありません。つまり、義務を守らなくても罰金などを払うことにはならないし、逮捕されることもありません。人々の安全への意識を高めることが、この条例の目的であるのでしょう。
ただ、県民のみなさんが(もちろん私も含めて)、「罰金とかないんでしょ? じゃあ守らなくていいや」とか言って雑にエスカレーターを利用していると、条例が改正されて罰則の規定が誕生するかもしれません。自転車に対しての青切符が誕生してしまったのと同じように(あれは条例じゃなくて法律ですが)。なので日々、ともに気をつけてエスカレーターに乗っていきましょう。
しかしそもそも、なぜ右側をあけて乗るのがよくないのでしょうか? かつての日本では、「急いでいる人のために右側をあけておく」のが暗黙のマナーとなっていました(地方によって異なるかもしれませんが)。
しかしながら、もともとエスカレーターはそういう利用方法を想定して製造されていません。左側だけに負荷がかかることで、故障の原因にもなります。
また、左側にしか立てないとなると、ものすごく困る人たちがおられます。左腕に怪我や障害を抱えている人や、小さなお子さんを連れている人です。左腕が不自由な場合、エスカレーターの左側に立つと、手すりをつかむのが困難です。左腕を無理に動かしてつかむか、右腕を左方に持ってこなくてはなりません。かなり不安定な乗り方であると言えます。後ろを向いて乗れば、右手でつかむことができますが、それはあまりにも危険ですし、一段下に乗っている人と見つめ合うことになって気まずいです。
そして、小さなお子さんを連れている人は、手をつないだ状態でエスカレーターに乗らないと危険です。しかし右側をあけなくてはならない場合、お子さんと手をつないで乗るのが難しくなります。
私はこれらの理由を知ったときに、ハッとさせられました。気づかなかったけれど、よく考えたらその通りだな、と思いました。エスカレーターを故障させ、左腕が不自由な方々、小さなお子さん連れの方々を危険な目に遭わせてまで、右側をあける必要なんてないよな、と。急いでいる人たちの機嫌を損ねないために、どうしてそんなことをしなきゃならないのか、と。急いでいるならエスカレーターを使わず、階段を駆け上がればいいじゃないか、と。
埼玉県のホームページより引用
とまあ、そんなわけで、私は「左右両側に立ち止まる」のを新しいマナーとすることに大賛成です。とは言え、みんなが左側に立っている中で、一人だけ右側に立つのはかなり勇気のいる行為であり、つい私も左側に立ってしまいます。なので、この記事を読んでくださったみなさん、ともに勇気を出し、左右両側に立ちましょう。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という有名な言葉がありますが、私は「エスカレーター、みんなで左右に立てば怖くない」というフレーズを提唱したいです。急ごしらえの言葉だから、語呂は良くないですけれど。もっと良いフレーズを思いついたら、ぜひ教えてください。
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